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【経営の質を高める経営革新計画】「カテリーナの森」(杵築市)

母屋の改築に対する思いと展望を語る松本未来代表理事
母屋の改築に対する思いと展望を語る松本未来代表理事
  • 母屋の改築に対する思いと展望を語る松本未来代表理事
  • 製作してきた「管」「弦」「打」の古楽器。
  • 改築前の母屋。以前の持ち主が学習塾を開いており、地元の人にもなじみ深い建物
  • カフェでは、地元の旬の食材を使った料理を提供する計画(写真は、試験的に実施した食事会イベントで提供したもの)
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 ヨーロッパの中世・ルネサンス期に存在し、その後途絶えた古楽器を復元し製作している一般社団法人カテリーナの森(杵築市山香町)。同所でカテリーナ古楽器研究所を設立し制作を始めて30年以上がたった。これまで家族が暮らしてきた築130年以上の母屋を劇場やカフェのある施設に改築する計画を実行し、理想の森づくりを進めている。

■古楽器を研究、手作業で復元

 古楽器製作家の松本公博さん(故人)が1972年に研究所を東京都福生市に開いた。1991年に、大分県杵築市山香町へ工房を移し、家族とともに移住。同所で日本の樹木や竹素材を利用した楽器づくりに取り組んできた。
 製作している古楽器は700年以上前の、ギターやバイオリンなどの先祖にあたる楽器。ほぼ現存していないため、絵画などに残された手がかりをもとに当時の楽器を研究し、復元してきた。プロの音楽家や愛好者からの注文を受け、手作業で製作。その仕事の誠実さなどもあり、製作の注文を地道に増やしている。

■母屋を改築、人が集う施設へ

 現在、古楽器を主に製作しているのは「一般社団法人カテリーナの森」の松本未来代表理事(42)。父・公博さんの技術と志を受け継いでいる。
 これまでも、未来代表理事は、古楽器を通じたワークショップも製作の傍らに開いてきた。一方で工房のある杵築市山香町で進む過疎化。その課題を切実に感じる中で「この土地に、新しい希望の場所をつくりたい」との思いを強くしていた。
 松本代表理事は、地域の過疎化に対するカテリーナの森の関わり方を検討した。そこで、カテリーナの森の象徴的な場所である母屋の活用を考えた。明治26年(1893)に建てられ母屋は、大黒柱や大きな梁(はり)がある重厚な古民家で、2024年に国登録有形文化財となった。東京からの移住後には、松本さんの家族が暮らしてきた場所でもあった。
 その母屋を劇場やカフェ、ギャラリーなど、多目的に使える施設に改築し、新しい「希望の場所」にすることを決めた。老朽化が進んだ母屋は、人が集う施設にするためには、大規模な改築が必要だった。このたたずまいを残しながら新しい施設へと改築するためには多額の資金が必要となる。その調達方法を調べる中で、大分県の経営革新計画を知った。

■自然の中のカフェ、ギャラリー

 検討してきた改築プランをもとに書類作成するなど計画申請への準備を進めた。「山香の自然と古楽器と共に過ごす古民家カフェ事業」をテーマに申請し、24年1月に承認を受けた。承認により改築費用などに県からの補助金を活用できる見込みとなった。ほかにもクラウドファンディングで改築資金を募る計画だ。
 2026年春に完成を目指す新しい施設「カテリーナの森の劇場コクーン」への改築工事は24年12月から始まった。演奏会が開ける劇場(100人未満を収容)や地元食材を使った料理を提供するカフェ、2階にギャラリーを設ける。 経営革新計画の活用について、松本代表理事は「補助金が活用できる点は大きなメリット。計画申請の手続きの中で事業について考えを深めることもできた。実現までの道筋が明確になった」と感じている。
 古楽器の製作だけでなく、音をつくり奏でる場、人が育つ希望の場へ―。多くの人とつながりながら新しい希望と文化の芽を育む。この地に移住してきた時から思い描いてきた理想の森の姿に少しずつ近づいている。

Company info

会社名・一般社団法人カテリーナの森
代表者・松本未来代表理事
所在地・杵築市山香町野原
業種・古楽器の製造など
従業員・2人
資本金・300万円

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