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【リーダーズボイス】山渓(大分市)代表取締役社長 伊東志郎さん

修業時代はあらゆる装備を使いに山に行った。「山の商品は経験に裏打ちされた目利きがないとできない」=大分市
修業時代はあらゆる装備を使いに山に行った。「山の商品は経験に裏打ちされた目利きがないとできない」=大分市
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 1968年の創業以来、山渓(大分市)は国内外のキャンプや登山用品ブランドを数多く扱い、愛好者に支持されてきた。伊東志郎社長(47)はアウトドア用品専門店として地域密着を図りつつ、オンライン販売で時代の変化に対応している。
 同社の売り上げの9割以上(14億円)をオンライン販売が占める。オンラインショッピングモール「楽天市場」には2008年から出店。18年には同モールの「アウトドア・レジャー」部門で売り上げが全国1位に輝いた。
 オンライン販売では約3万点の豊富な品ぞろえでライバル企業との違いを出す。寝袋の収納ケースといった単価の安い物を求めるニッチな需要に対応し、購入につなげる。「一度買い物をすると、リピーターになる事が多い。小さな買い物でも、まず使ってもらうことが大事」
 ネット事業の拡大は、危機感からだった。当初は店舗で売れ残った商品を中心に販売していた。全国に店舗展開するライバル社は大量に仕入れ、安く売っている。販売量を増やさないと、業者と値下げ交渉ができず、販売価格を下げられない。放っておけば県内の顧客が流出する恐れもあった。「オンラインからの撤退があり得ない以上、ライバル企業との競争に参戦する以外、選択肢がなかった」。覚悟を決めた。
 豊富な商品数を確保するのに店舗販売で培った業者との信頼関係が役立った。登山用品とキャンプ用品はそれぞれの専門店が扱うことが多い。山渓は両方とも取り扱っており、多様な業者と付き合いがあった。
 オンラインは季節商品の販売を強化するのに効果的だった。店舗を利用する県内客だけでは冬物が売れる時期は短い。全国が相手のネット販売は地理的な弱点を補い、冬物を長い期間販売し続けられる。繁忙期の夏と閑散期の冬の売り上げ差を埋める事ができた。
 競争に打ち勝つには「小売業は変化対応業。実践が欠かせない」と強調する。例えば、オンラインは人口の多い首都圏からの注文が圧倒的に多い。九州から送っていては余分なコスト、時間がかかることから、4年前に物流倉庫自体を大分県内から千葉県に移した。大量の注文に対応できるようシステムを強化し、倉庫管理も行う。
 コロナ禍で社会のルールが大きく変わり、アウトドアレジャーのニーズは高まっている。同社では民間団体と一緒に子どもから大人までアウトドアを楽しむイベントを開催。伊東社長が代表のグループ会社「Goap(ゴーアップ)」はリバーパーク犬飼(豊後大野市)の指定管理者を務める。「コト、モノ双方の消費を増やす、新しいライフスタイルをしっかり提案していく役割がある。感染を予防しながら、いかに外遊びができるのか。考えていかなくてはいけない」。自社を通して人生を豊かにするという信念の下、チャレンジを続けていく構えだ。

Profile

 いとう・しろう 1973年生まれ。大分市出身。九州国際大卒業後、大阪府のスポーツ用品商社や愛知県のアウトドア用品店勤務を経て山渓入社。創業した父の後を継ぎ、2010年から現職。

Company info

【会社名】山渓
【従業員数】23人
【売上高】15億円
【資本金】300万円
【所在地】大分市生石

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