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【挑戦の質を高める経営革新計画】① イグジット(大分市)

顧客からの要望がきっかけでBCP策定事業に乗り出した、イグジットの吉岡隆治代表取締役=大分市
顧客からの要望がきっかけでBCP策定事業に乗り出した、イグジットの吉岡隆治代表取締役=大分市
  • 顧客からの要望がきっかけでBCP策定事業に乗り出した、イグジットの吉岡隆治代表取締役=大分市
  • BCP策定事業の普及に向け、展示会にも出展した。現在までに全国で400施設のBCPを策定した。
  • 消防設備の点検をするイグジットの従業員
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 顧客からの要望がきっかけで未経験の事業継続計画(BCP)策定業務に挑戦した、消防設備の設置や保守、コンサルティングを手がけるイグジット(大分市高松)。BCP策定業務は、2年間で全国の事業所から依頼を受けるまでになり、売り上げの柱の一つに成長している。

■介護事業所に義務付け

 2024年4月までに、BCPの策定が介護事業所では義務付けられている。イグジットが始めたBCP策定サービスの利用者は、主に介護事業所。障害者支援施設でも活用されている。顧客事業者に求められる作業は次の三つ。①施設の住所や業態、スタッフや利用者の人数などの項目を埋める質問票に入力②災害用の物資の有無や職員一覧などを様式に記入③オンラインでの聞き取りに回答(45分を2回)。

 介護事業のBCPで重要視される事は、災害時にスタッフをどう確保するか。イグジットでは受け取った情報やハザードマップを基に災害リスクを分析。「入所」「通所」「訪問」といった運営方法の違いや立地条件、地震や津波といった災害ごとの優先順位を考慮し、それぞれの事業所に適した策を提案する。厚生労働省の書式に合わせ、およそ70ページの書類を作成する。2~3施設を運営する事業所であれば、3カ月ほどで施設ごとのBCPが納品される。

 イグジットのBCP策定サービスは1施設分、データのみの納品で17万円から。競合である保険会社のBCP策定は丁寧で質が高いものの、高額になるケースが多いという。価格を抑えたウェブサービスもあるが、インターネットに疎い事業者には使いづらい。

 同社ではオンライン面談で移動費などのコストを抑えている。顧客はLINE(ライン)でいつでも質問できるなど、サポート体勢を充実させる。現在までに北海道から沖縄まで、400施設のBCPを策定したという。

■訓練サービスを提供

 介護事業者は、策定したBCPが災害時に確実に使えるよう、訓練も義務付けられている。イグジットでは以前から消防訓練を請け負う事業を運営しており、ノウハウを生かして「BCPリアル訓練開催サービス」の提供も開始した。スタッフが同席し、顧客施設で実施する。

 訓練では、災害時を想定して図面を広げ、対応をシミュレーションする。「できるだけたくさんの人を受け入れるか」「症状が重い人を優先するか」「子どもは受け入れるか」「ペットはどうするのか」。訓練中に出てきた課題を一つずつ解消しながら、施設ごとの方法を決めていく。現在は全国の4施設から依頼があり、順次開催している。今後、すでにイグジットとBCPを策定した事業所を中心に、注文が増えると見通している。

■改めて本業にも力

 BCP策定事業に取り組むきっかけは、本業の消防設備点検で取引があった介護事業者に「BCPを作ってくれないか」と頼まれたことから。BCPについて調べると、消防設備に関する書類作成業務など、既存のノウハウを応用できる点が多い事が分かった。一方、介護事業所の業務に関する知識は皆無。顧客へのヒアリングと計画書の修正を繰り返す事で、BCP策定の方法を確立させた。

 新事業として始めた当初は、問い合わせや注文数はなかなか伸びなかった。ただ、BCP策定義務化の猶予期限の2024年4月が迫ると、問い合わせが増えだした。2023年7月、全国に向けて広く知ってもらう点と資金面での補助を見越して、大分県の経営革新計画の承認を受けた。

 現状、訓練サービスが高価格に設定せざるを得ないことが課題。BCP策定はリモートで完結できるが、訓練は対面で実施する。移動でかかる交通費は、顧客事業者の負担になる。解決策として、全国の消防設備事業者に、訓練を請け負ってもらえないか模索している。

 イグジットの吉岡隆治代表取締役(45)は意気込む。「BCP事業が軌道に乗ってきた事もあり、これからは改めて本業にも力を入れたい。消防設備の点検ニーズはあるが、各社は人手不足で対応できていない現状がある。3月からは福岡市に営業所を出した。今後20年ほどで大阪、東京まで進出し、200人ほどの規模に成長させたい」

 (4回続き、年齢は記事公開時)

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