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【講演会場見聞録】起業家が感じる大分の魅力とは

登壇した(左から)中村広樹さん、野中牧さん、鶴岡英明さんとモデレーターの木原寿彦さん
登壇した(左から)中村広樹さん、野中牧さん、鶴岡英明さんとモデレーターの木原寿彦さん
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  • 起業家らが参加した会場
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 起業家らを対象に事業成長を支援するアクセラレーションプログラム「Oita GROWTH Ventures」(県などが主催)のパネルディスカッションが7月に開かれた。パネリストは、同プログラムの前身事業に採択された経験があるイジゲングループ(大分市)の鶴岡英明代表取締役、薬けん(別府市)の野中牧代表取締役、ベストリビング(日田市)の中村広樹代表取締役。モデレーターは「KIHARA Commons」(大分市)の木原寿彦代表取締役が務め、これまでの成長や変化などについて意見を交わした。要旨は次の通り。

―それぞれが考える「成長」とは?

鶴岡 ITベンチャーのイジゲンを前身とするイジゲングループは昨年、M&A(企業の合併・買収)によって西日本シティ銀行が中核の西日本フィナンシャルホールディングスに参画した。現在は同グループの一員として、企業や自治体向けのデジタルトランスフォーメーション支援などを展開している。
 私の場合、成長という言葉の意味はM&A前後で大きく異なる。M&A前は、当社の成長をいかに最短で最大化するかというところにフォーカスしていた。しかしM&A後はグループ全体のシナジーを考え、顧客をいかに成長させるかというところを最も大切に捉えている。顧客にとっての最適解を提供し続けられるよう努力し、顧客の成長と当社の成長をリンクさせることが、私にとっての成長である。

野中 大分県では慢性的に薬剤師が不足しており、薬剤師はなかなか休みを取ることができない。私自身、薬剤師として、二児の母としてその悩みに直面したことから、働く女性のために休みやすい環境をつくることを目的に起業し、薬けんを設立。薬剤師と薬局をつなぐマッチングアプリ「ふぁーまっち」の運用を開始した。私にとっては、そのアプリを通じて社会貢献できているかどうかが成長の指標だと考えている。アプリの存在を知った鹿児島の薬剤師が大分に移住して働いているという例もあり、私が想像する範囲を超えて好影響を与えていることにも成長を実感している。

中村 ベストリビングは先代である父が創業したソファメーカー。店舗やオフィス、ホテルなどに置くソファをオーダーメードで手がけている。子どもの頃からソファ職人に囲まれて育ち、子ども心に職人の格好良さを感じていた私は、その格好良さを価値として伝える必要があると感じ、1年半ほど前に「格好良さを伝える場所」として「CRIATIVE BASE FAB」をオープンした。この事業は成長したいという思いが先にあったわけではなく、まず自分がやりたいこと、やらなければならないことに挑戦したもの。成長とは、やりたいことをやった先にあるものだと考えている。

―大分発のベンチャーとして、大分にどのような魅力や可能性を感じているか?

野中 当プログラムを含め、起業支援が充実しているのは起業家にとって魅力だ。私は薬剤師業界のことなら熟知しているが、起業家としては素人なので、多くの支援事業を活用しながら今まで歩んできた。そういった意味で、大分は起業しやすい地域だと言える。

鶴岡 これは大分だけでなく地方全般に言えることだが、東京や大阪といった外側を見るのではなく、自分たちのすぐ内側にある課題を掘り続けることで、世界に通用するソリューションが生まれる可能性は高いと思っている。野中さんの話にも通じるが、大分には課題解決に取り組む起業家を支援してくれる人がたくさんいるので、内側を掘り続けられるポテンシャルがある場所だと感じている。

中村 なぜ大分で事業をやるのかと考えたら、「生まれ育った古里だから」という単純な思いに行き着く。私自身、「CRIATIVE BASE FAB」のオープン前に有名な家具産地などを訪れておのおのの取り組みを見聞きしてきた。どの地域も、古里が持つポテンシャルを伝えようという強い思いを持っていた。その時に、自分がやるべきことは東京や大阪をまねることではなく、足元にある価値を見直して伝えることだと気付かされた。

―アクセラレーションプログラム(アクセラ)に参加して良かったことやその後の変化は?

野中 多くのプロフェッショナルから適切な意見やアドバイスをもらえたことは、とてもありがたかった。私自身、アクセラに参加して相談相手が増えたので、そこが自分の強みの一つになっている。起業に向けて一人で取り組み、相談できる人がいないと悩んでいるのなら、ぜひアクセラに参加してほしい。

鶴岡 私の人生は、アクセラによってできていると言っても過言ではない。当社の共同代表はアクセラで私のメンターを務めてくれた人だし、運営側にいた人とも今は一緒に働いている。参加したからこそ今の自分がある。

中村 自分を引っ張ってくれる、背中を押してくれる人たちと出会えて、事業が加速していくことを肌で感じた。1年前には全く見えなかった景色がおぼろげに見えてきて、おぼろげに見えてきたものがさらにはっきりと見えるような感覚だ。アクセラへの参加は「夢を当たり前にする」きっかけになるものだと思っている。

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