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【起業家が起業する理由】④ 障害のある人に「履きたい靴」を

自身のため、同じ悩みを抱える人のため、サイズが異なるシューズが買えるECサイト構築を目指す副田優海さん
自身のため、同じ悩みを抱える人のため、サイズが異なるシューズが買えるECサイト構築を目指す副田優海さん
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 「あなたは今、どんな靴を履いていますか。私には、この靴しかないのです」―。左半身にまひがあり、左右のサイズや消耗具合の違いから「履きたい靴」ではなく「履ける靴」を選んできた副田優海(ゆうか)さん(23)=大分市。自身のため、同じ悩みを抱える人のため、左右異なる大きさや片足ずつなど、自由にシューズを購入できるECサイトを作ろうと立ち上がった。

▶片足ずつや左右異なるサイズで

 サービス名は「parastep(パラステップ)」。障害などにより靴に左右差がある人たちおよそ135万人をターゲットにする。片足ずつか、左右異なるサイズで購入できるようにし、国内外の有名靴ブランドを取りそろえるという。来年1月にも、大分県別府市で法人を立ち上げる。5年間で1億3500万円の売り上げを目指す。

 副田さんのように体に障害のある人が、靴を買うときの現状の選択肢は①既存メーカーの片足販売②オーダーメード③介護用シューズ④サイズが異なる、同じデザインの靴を2足購入―などがある。①と③は比較的安価だが色やデザインの選択肢が少なく、②は高額。④は金額が2倍となる上に、片方ずつ捨てることになる。

 副田さんは脳性まひがあり、左半身がまひしている。小学生の頃は左足に装具をつけていた。サイズが異なる靴を2足用意して、装具をつけた左足は大きいサイズの靴を履いていた。中学生からは装具を外し、靴は同じサイズになったが、歩くときに左足を引きずるように進む。そのため3カ月ほどで左足の靴底に穴が開くという。ひもを結ぶのが大変なため、ひも靴は選ばない。購入できる靴の選択肢が極端に少なく、寂しさと諦めを感じていた。

▶原点は「自分もナイキを履きたい」

 「この悩みは私だけなのだろうか」。交流サイト(SNS)を通じて、靴のサイズ差がある人たちにヒアリングをすると、同じ悩みがあるという回答を多く得た。何かしたいと考えていたところ、母親から別府市の起業家シェアハウス「SEKIYA.so(せきやそう)」の存在を聞いた。相談すると、運営者や入居者らから「ビジネスで解決できる」と後押しされた。

 副田さんは別府市が主催するビジネスプランコンテスト「ONE BEPPU DREAM AWARD2022」や大分銀行(大分市)の「だいぎんニュービジネスプランター」などでアイデアを披露。冒頭のせりふで聴衆の注目を集め、両コンテストで入賞を果たした。

 大分東明高に通っていた頃、仲が良い同級生が米ナイキ社製のスニーカーを履いていた。「かっこいい。自分もナイキを履きたい」という思いが原点にある。「本当は臆病なので、起業するとは夢にも思っていなかった」と笑うが、1月に勤務先を退職。創業に向けて専念する環境を整えた。事業を成長させ「いずれはパラリンピック選手への靴の提供や、障害者雇用にも取り組みたい」と夢を膨らませている。

 (年齢は記事公開時)

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